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なつみ憂のブログ

主に本や映画について。高学歴ニート→Webデザイナー

SEALDsがなぜバカにされるかを小学生にも分かるように説明する

SEALDs

参照:asahi.com

 

小学生「安保法案、可決されちゃったね。これで日本が戦争に参加するようになるし、僕も大人になったらどこか外国で戦ったりしないとダメなのかなあ」

 

「今回の安保法案に関しては、あれが通ったところでそこまで戦争の心配をする必要は無いと思うよ。もちろん自民党のやり方は滅茶苦茶なところがあるし、安倍首相もここ数ヶ月酷い発言を繰り返してきた。けどそれとは別に、法案の内容から考えて、これですぐに戦争に巻き込まれるとか、徴兵制が始まるとかって言う事は全然ない。というか戦争云々以上に、このまま自民党政権を放っておいたらちょっとまずいことになるのは間違いないね。もっと根本的なところを危惧すべきだとはおもうんだけど」

 

小学生「でもさあ、SEALDsの人たちは安保法案が通ったら、まるで日本がおしまいだとでも言うように大騒ぎしているよ。安倍総理はひどい政治家で、日本を戦争ができる国にしようとしていて、今の平和な日本をぶち壊そうとしているんだって言ってた。これだけの人が反対を叫んでいるのに、その意見を無視するのは民主主義の理念に反しているってさ。僕もSEALDsの人たちはすごく正しい事を言っていると思うんだけど、なんだか世の中の人はSEALDsの人にとても厳しいと思うんだ。特にインターネットでツイッターとか、まとめサイトとかを見ると、SEALDsの人たちがめちゃくちゃバカにされてて、それを見ていると確かにSEALDsの人たちが滑稽に見えちゃったりもするんだけど、やっぱり日本の平和を望んでいる人達がバカにされちゃうって、なんだかおかしいと思うんだけどなあ。」

 

「小学生君は"保守"とか"右翼"とか"リベラル"とか"左翼"って、聞いたことあるかい?」

 

小学生「あまりよくわからないなあ。でも右翼ってたまに聞く。なんだかおっかないイメージがあるよ」

 

「なるほど、この辺の言葉を使って、SEALDsが一体どんなものなのか、一旦考えてみよう。今回の安保法制周辺の話をするにあたって誤解を招きにくくするために、それから話をわかりやすくするために、ここでは"保守"と"左翼"という用語で説明していくね。まず"保守"。これは今回の安保法案でいえば、法案に賛成している人たちの事を指す。日本が軍隊を持って、自立した国になった方がいいと思っている人たち。その逆に"左翼"の人たちは平和が大好き。戦争なんてけしからん!という事で安保法案にも大反対している。つまりSEALDsは左翼に大別されるんだ。」

 

小学生「へえ。つまり保守ってすごく乱暴な人たちなんじゃないかと思うんだけど。やっぱりSEALDsの人たちってすごくまともなんじゃないの?」

 

 

 

「ちょっと遠回りだけど、保守についてちゃんと説明するよ。要は保守っていうのは必ずしも頑固で乱暴な人たちっていうことじゃなくて、自分自身の感情に対して正直で、ピュアな人たちって事なんだ。つまり国政の場で保守的な人とはどういう人を指すかというと、日本の美しい風土や歴史、それを象徴する天皇家なんかに心を打たれて、最大限の敬意を感じていると。その気持を忘れず、政治の場においてもそういう日本が受け継いできたものをあくまでも守ろうとする。だから保守っていうんだよ。軍隊を持つとかっていうのは、あくまでもそれに付随する手段でしか無い。彼らにとっては、外国の軍隊が攻め込んできて日本を破壊されることが耐えられないからね。」

 

小学生「すっごい真面目じゃない!」

 

「そう。自分の気持ちに正直な、真面目で尊敬に値する人たちなんだよ。本来の保守派はね。次に左翼を説明するよ。左翼っていうのはね、平和を愛したり自然を守るってことじゃない。要は保守の人たちが大切にしているピュアな感情に対して絶えず疑いの目をもち、社会の変化に応じて社会や人間のあるべき形を常に考えていく、という姿勢を持っている人たちの事を左翼というんだ。」

 

 

 

 

小学生「なんだかむずかしい・・」

 

「例えば最近こんなニュースがあった。 渋谷区で、同性カップルに対して事実上結婚を認めたんだ。これはどんな国でもそうなんだけど、社会が未熟な状態だと基本的に同性愛はあってはならないものとされる。性愛や恋愛感情は人間にとって根源的なもので、大多数の男性は女性が好きで、大多数の女性は男性が好きだ。小学生くんも、こないだ小学生子ちゃんの事が好きだっていってたよね?それって小学生くんの感情から湧き上がってきた、とってもピュアなもので、とても素敵なことだとおもうんだ」

 

小学生「なんだか恥ずかしいけど・・、でも小学生子ちゃんのこと好きだよ!」

 

「もし小学生くんの男の子の友達で、男の子が好きだっていう人がいたらどう思う?正直に言ってみていいよ」

 

小学生「う〜ん。すごく申し訳ないけど、ちょっと気持ち悪いって思っちゃうかな。でもだからって、それで友達をやめたりイジメたりするってことはしないよ。その友達のきもちが分かるように、がんばって理解しようするよ!」

 

「素晴らしい!その気持を捨てなければ小学生くんはすごく立派な左翼だよ。つまりね、その"気持ち悪い"っていう感情に忠実でいると、保守の悪い面が出てくるんだ。恋愛や性愛とか、人間の根源的な感情について共感できない事例をみると、どうしてもそれが異質なものに感じられてしまう。小学生くんはまだ小学生だし、それは必ずしも悪いことじゃないよ。でも視野を広く持って、ゲイやレズビアンの人たちの気持ちになって考えることが必要だよね。ある程度社会が成熟していれば、こういう少数派の人たちの居場所を認めるような余裕が出てくる。それから、同性愛に対する研究も進んでいけば、科学的にも彼らが間違った存在でない事がみんなに証明される。左翼っていうのは、こういうふうに色々な特徴を持った人たちが一緒に生きていけるような社会を作っていく人のことなんだよ。ちょっとむずかしく言うと、”多様性に対する寛容”。これが左翼。」

 

小学生「じゃあ、SEALDsの人たちは左翼と言えるのかな。平和を考えていて素晴らしいんだけど、基本的に安倍総理に対して文句を言っているだけだと思うんだけど・・」

 

「さて、SEALDsは左翼なのか何なのか。もちろんSEALDsの中にもいろいろな人たちがいるし、SEALDs以外にもデモ参加している人は沢山いるから、いっしょくたにレッテル張りするような事は避けたほうがいいね。そもそも左翼っていうのは居場所でも団体の属性でもなくて、個人が心に秘めておくべき信念のようなものだから。でもひとつ言えるのは、SEALDsは僕らにとって希望でも未来でもなければ、新しい時代を担うリーダーでもない。彼らは極めて凡庸なテンプレート。つまり自動的に湧き出してくるひとつのパターンなんだ。」

 

小学生「パターン、つまり何かの真似をしてるってこと?」

 

「必ずしも何かの真似をしている訳じゃない。でもそれが逆に深刻なんだけどね。つまり今回みたいに権力を持っている人がちょっと暴走気味になると、暇で性的欲求不満を抱えた、利害関係の無い若者が大量に湧きだしてきて、形だけデモを行って反対運動に打って出る。これってどこの国でもどんな時代でも繰り返されてきていることなんだよ。内容はもう何でもよくて、とにかく若者・学生は権力者に対して圧倒的に弱い立場だから、それを逆手にとって結構乱暴な言葉を使って政府を批判するわけ。弱い人が強い人に文句を言っているわけだから、客観的にみればそれ自体には文句はつけにくい。だからここぞとばかりにみんな大騒ぎするんだ。"行動的で政治的な若者"として一部の人から認めてもらえるしね。若者はいつでも、自分たちの時代は特別で、自分が年長者よりも頭が良いと思い込んでいる。それはもちろん錯覚で、そもそも政治や権力構造は頭の良さとかの問題では無い。」

 

小学生「そんなんだ・・。すごく頭良さそうにで参議院特別委員会でもしゃべっていたし、政府の人たちもSEALDsとかデモのことを気にかけているんだよね?」

 

「いや、全く歯牙にもかけていないよ。さっきも言ったけど、こういうデモとか反対運動は自動的に湧き上がってくるし、自民党の人もやる前からわかってた。むしろね、谷垣さんていう自民党の人がぽろっと"デモは思ったより規模が小さい"なんて言ってたけど、あれは本音だと思うんだ。もっと苛烈な反対に合うってみんな思ってたと思うよ。SEALDsの奥田さんが特別委員会に行ったっていうのも、完全に利用されているとしか見えない。あれで法案が覆るわけではもちろん無い。ああやって若者の話に耳を傾ける姿勢を見せて、政府のほうがイメージの向上を図っているだけだよ。本当に力のある左翼の指導者が現れたら、国会なんかに呼ばないよ。呼ぶ義務なんて無いんだから。」

 

小学生「でもSEALDsはさ、ツイッターとかFacebookとかを使って、全国的なチームになっているみたいだよ。確かに今までに無く大きな影響力を持っているんじゃない?安保法案が通ってしまったとしても、今後はもっとインパクトのある活躍ができるんじゃないかなあ。」

 

「ネットが社会を変える系の議論ていうのはね、もうずっと前に終わったんだよ。例えばアラブの春っていうのがFacebookから火がついて、エジプトで独裁政権が倒されたんだけど、そのあといろいろあって絶賛大混乱中だと。それからイスラム国(IS)がSNS経由で構成員を快調に集めたり、YouTubeで広報活動を行ったりなんかして、世界的にみても、政治の場に安易にネットを持ち込むとこういう方向に行ってしまう。それからもうみんな忘れかけているけど、去年の参院選の時に"小4偽装サイト"っていう問題が起こった。とにかく自分を認めさせたい、自己顕示欲の強い若者と、現代の社会に強く根付いたインターネットというものを結びつけると、こういう非常に醜い事態しか生まない。」

 

小学生「なんだか夢も希望も無い話だなあ」

 

「いや結構マジで夢も希望も無いよ。ネットが出始めのころはね、みんなネットで色々な事がよくなると思ってたんだ。ブログで自由闊達に政治的な意見を交わし、弁証法的に社会が良くなると言ってみたり、YouTubeみたいな素人参加型のメディアが増えてより豊穣な文化が形成されると言ってみたり、ほとんどなんでもありの状態で、新しい話題が出ては"これで世界が変わる"といってはばからない人たちはたくさんいた。でも結果はISであり小4であり痛いニュースであり、そしておそらくSEALDsもそこに組み込まれてしまう。」

 

小学生「じゃあSEALDsの人たちは何か間違っているのかな?なんでネットで叩かれちゃうんだろう」

 

「これは正しいとか間違っているとかの話じゃないんだよね。とにかくSEALDs的なものは自動で出てくるから。SEALDsがバカにされちゃうっていうのは、ネットとは別に、日本の社会状況も大きく関係している。宮台真司っていう人が、"感情の劣化"っていう事を言っているんだけど、要は現代の日本を始めとした先進各国では、1980年代〜2000年代にかけて、お金持ちな人と貧乏な人の格差が広がってしまったと。民主主義が正常に作動するためにはお金持ちでも貧乏でもない人々=中間層を前提としているんだけど、中間層が一気に少なくなってしまった。それで現代の政治では、極端な意見が幅を効かせるようになってしまっている」

 

小学生「日本では、小泉総理の時に格差が広がったんだよね」

 

「経済的な格差だけならまだしも、日本では共同体の分解も生じた。宗教的な基盤が少ない日本では、戦後はずっと会社が共同体として機能していたんだけど、小泉さんのときに非正規雇用者がどっと増えてしまって、会社が居場所だっていう感覚がかなり薄くなった。それ自体は一面的に悪いこととは言えないんだけど、多くの人が会社に身を委ねていた日本社会では、それは個々人に精神的な不安定をもたらした。小学生くんも、”勉強をがんばらないと、小学校から追い出されてしまう”なんてことになったらビクビクしちゃうだろう?」

 

小学生「そんなのは想像もできない・・」

 

「人は自由に生きるべきなんだけど、一定の承認を得られなければ実りある人生を送れないことは確かだからね。こうして鬱屈をためこんだ人たちが、ネットでひどい書き込みをしている。宮台によると、匿名掲示板の差別的な書き込みの数は、日本はアメリカの4倍ぐらい多いらしい。つまり感情が劣化した人たちがすごく多いんだ。感情っていうのは、さっき保守の話でも出てきたあの感情と一緒。要は何を美しいと思うか、何に敬意を払うかという問題で、それに対してピュアに行動するということなんだけど、感情が劣化しているために、非常に歪んだ形の行動に出てしまう。それがネトウヨ。今自分が恵まれていないのは自分のせいではなく、他の誰かのせいだとしか考えられない。さらに言うと、彼らは誇るべきものが何も無いため、最後に手段として日本人であることが自分の埃だと信じて疑わなくなる。想像の共同体っていって、国籍が日本である事自体にはなんら誇るべき根拠はないんだけど、それを信じるしか彼らには道が無い。それを脅かすものは全てが憎らしくみえてしまう。」

 

小学生「それで、ヘイトスピーチとかやっちゃうんだ・・。」

 

「でね、SEALDsの話に戻るけど、本来左翼っていうのは、"多様性への寛容"を維持するために、時には耐え難い屈辱も味わって行かなければならないものなの。それから、感情的なものに論理で打つ勝つために、莫大な知識を持っていなければならない。つまり一朝一夕には左翼性なんて身につかないんだ。SEALDsにそれが無いのは言うまでもないけど、SEALDsを擁護している文化人たちにそれがあるかというのも、甚だ疑わしい。例えば欧米にはピーター・シンガーとかスラヴォイ・ジジェクとかっていう、徹頭徹尾の知性と行動力で周囲から尊敬を集める、本当に凄い左翼がウジャウジャいる。そこからすると、承認と私利私欲だけでしか動かない日本の左翼は遥かにレベルが低い。これはもう客観的な事実だよ。まあSEALDsはどうなるにせよ居場所系であり、自己顕示欲が満たされて就職とか結婚とかして利害関係が生まれて・・ってなったら自然消滅。意固地に続けた一部の人達が過激な言動に出る、みたいな事で終わるんだろう。別にそれはいいよ。逆に言えばそういう若者が出るってことが、社会が正常に動いているっていうことでもあるしね。本気でSEALDsの活動に打ち込んで、限界を感じて何か学ぶ人が出てくれればそれでいい。つまりSEALDsは僕には単なる自然現象というか、何かのパターンとしか見えてはいないんだけど、そこに何の可能性もないのかと言えばもちろんそんな事はない。SEALDsのメンバーたちは今、その活動を通して様々な壁にぶつかり、周囲からさまざまな反応を得ていることだろう。それらを通して、何がダメで逆に何が有効だったのか、常に前回の成果を図って分析し続ける。そして有効な施策に賭けて行動し、を繰り返す。政治だろうが芸術だろうがデモだろうが、ある権威を倒そうとするのであればそういう資本主義的な思考でなければいけない。SEALDsは良くも悪くもすごく注目を浴びた。だからこそ、その中からそういう光る人材が出てくることを期待してやまないね」